約1,000の客室の最後の一室が2020年前半にオープンを予定し、収益は増加の一途をたどる中、フィリピンのIR、オカダ・マニラがその巨大な可能性を存分に発揮することになりそうだ。
競争が激化するアジアのランドベースカジノ業界。ライバル地域が火花を散らす中、フィリピン、さらに具体的に言うとそのエンターテインメント・シティ統合型リゾート地区は、突出した長期の成長物語として最も輝いている。
フィリピンに対するアナリストの強気予想を代表するものとして、モルガン・スタンレーのプラビーン・チャードハリ氏とギャレス・レオン氏は、最近のレポートの中で、同市場は「浸透率の低さ、好調な地元経済、追加供給、中国人客の訪問数、VIPマージンの改善、有利な政策そしてインフラ改善に後押しされて、経済よりも早いスピ ードで成長することが確実視されている」と述べた。

数字だけで見ると、マニラのIRは2018年、前年比で27%の増加となる1,405億比ペソ(約3,045億円)の収益をあげ、2019年にはさらに11%増加することが予想されている。これはマカオやシンガポールにある主な地域内競合他社よりも高い伸びを意味する。
そしてフィリピンゲーミング業界の成長のまさに最前線にいるのがオカダ・ マニラだ。エンターテインメント・シティで最も新しいIRであり、44ヘクタールという広さに500台のゲーミングテーブルと3,000台のスロットマシンを有する国内最大の施設でもある。
2016年12月に初オープンしたオカダ・マニラは、完成にこぎつけるまで3年もの月日を要した。だか、その長きに渡った期間にようやく終止符が打たれる。およそ1,000室ある客室の最後の一室が2020年第1四半期にゲストを迎える予定だ。60㎡から1,400㎡まで様々な広さの客室が用意されており、その中には最近オープンした3つの高級ヴィラが含まれている。オカダ・マニラの担当者は、ハイエンドの顧客に極めて人気が高いという結果がすでに出ていると話す。
その人気は同施設の19年第3四半期決算にすでに反映されており、VIPローリングチップは1,385億6,000万円へと37.9%増加、そしてマステーブル・ドロップは50億8,000万円へと14.7%増加し、オカダ・マニラが成長する中、18カ月間の収益増加傾向を継続した。
しかしながら、アナリストが今後12カ月間に最も大きく成長すると見ているのはマスマーケットセグメントだ。
ユニオン・ゲーミングのジョン・ディクレー氏は、11月のレポートの中で、「ホテルの新しい500室の客室全てが稼働し始める2020年第2四半期に、なおも同施設でマスの取扱高が好調な増加を見せると予想している」と説明した。
同様に、オカダ・マニラの非ゲーミング施設は、明らかに他のアジアのIR施設とは一線を画すことを狙ったユニークなマスマーケ ット向けアトラクションを豊富に備えている。
その中でもトップにあるのが、音楽に合わせて光と水が自由自在に動き回る、3,000万米ドルをかけた噴水ショー「ザ・ファウンテン」だ。ダイナミックな水と音はクリスタル・コリドーと呼ばれる1km以上にのびるエンターテイメントスペースに囲まれている。
ザ・ファウンテンは、マニラを象徴する有名観光アイコンの1つになることを目指して、ラスベガスとドバイにある世界で最も人気の高い噴水ショーを作ったのと同じチーム、WETに企画・開発を任せた。
オカダ・マニラはまた、フィリピン初の屋内ビーチクラブおよびナイトクラブ「コーブ・マニラ」の所在地でもある。
全てが直径100m、高さ30mのUVA・UVB-保護のハイテクガラスドームに包まれた印象的な巨大スペースは、一度に最大5,500人を収容でき、小規模のナイトクラブ部分ではオーディオ、ビデオ、高解像度LEDウォールなどのアンビエント照明、モーションビデオプロジェクター、超最新サウンドシステム、移動式のセンターピースが絶妙に組み合わされており、最大1万の特殊効果を作り出すことができる。
コーブ・マニラには、日中の活気あるベイサイドの空気と、夜間の涼しい気候を再現するために設計された最新式の空調システムも備え付けられており、加えて世界に向けてイベントを生放送または遅延放送できる最新放送スタジオも設置されている。最近行われたイベントには、世界的に有名なDJのファットボーイ・スリムのイベントや、ミスユニバース・フィリピンのアフターパーティなどがある。
Inside Asian Gamingからのオカダ・マニラの長期計画に関する質問に担当者は、「当社ではこの施設を、様々な種類の人々に対応する機能を持つ統合型リゾートとして位置づけています。
オカダ・マニラが主に体現していること。それはエンターテイメントです。規模やゲーミングの種類に関しては恐らく国内最大のカジノおよびゲーミングエリアを持つ一方で、リラクゼーションからショッピング、食事そしてその他様々なエンターテイメントまで、ゲストがどのように時間を過ごしたいかについて多くの選択肢を用意し、本当の意味でゲストに楽しんでもらえる多種多様な施設を豊富に取り揃えています」と語る。
オカダ・マニラはまた、熱心にMICEの収容能力を推しており、コ ーブ・マニラを「典型的な会社のイベント会場ではなく」、「想像力を育み、交流を促進したい人が使える場所」と説明する。
「MICEの大きなトレンドの1つに、環境に配慮していることが明らかで、環境意識の高い運営と慣行が実践されている会場を求める人が増えていることがあります。
オカダ・マニラには、効率的な雨水採取システムがあり、施設で使用する水をリサイクルしています。将来的には、熱電供給に熱回収システムを備える予定をしています。また、当社では高性能Low-Eガラスを使用しており、エネルギー消費を大幅に抑えています。そして自然換気や自然なシステムを最大限活用することで、当社の構造が持続可能であることを保証しています」と話す。

2020年に入るにあたって否定しようのない事というのが、かつては安全性や有名な交通問題への懸念から旅行者にとっては危険な選択肢だと見なされていたマニラのIRが、今やその立地から利益を得ている。マニラにあるNAIAエクスプレスウェイの第2フェ ーズ拡張道路(ニノイ・アキノ国際空港とエンターテインメント・シティを結ぶ7kmに延びる有料高架道路)が2016年9月に開通したことで、この地区の状況は一変し、空路で到着した場合の移動時間を1時間近くからたった10分に短縮した。そして、そのエクスプレスウェイの出口ランプを出て、IR訪問者が最初にたどり着くのがオカダ・マニラであることを考えると、同施設は特に恩恵を受けてきている。
長期的には、同社はマニラ湾に独自のクルーズ船港を開発する可能性を模索しており、それによってフィリピンの拡大するクルーズ市場から利益を得ることが可能になる。さらに多くの客室を追加する、提案中の第2フェーズ開発には、現在の場所に隣接する土地でのコンドミニアムや大手ブランドのホテル建設といった様々な不動産投資が含まれるだろう。
ユニオン・ゲーミングのディクレー氏が言うように、「フィリピンは世界で最も急速に成長するゲーミング市場の1つであり、完成すればオカダ・マニラは市場でのカテゴリーキラーになる位置につけている」。