最近の交通の混乱、そしてさらなる暴動が起こる気配にも関わらず、今のところ香港のデモによるマカオのカジノ収益への影響は最小限にとどまっているようだ。
香港で最初にデモの兆候が見られてから5カ月、そして2019年6月9日にその動きが大幅に拡大してから3カ月が経過した。
この抗議活動は、香港政府が2月に提案した「逃亡犯条例改正案」が対象となっている。
改正案は香港が現在特別に引き渡し契約を結んでいない地域、とりわけ中国で、指名手配されている人物を地元当局が拘束・引き渡しすることを可能にする。一部の香港人は、この改正案によって中国の支配が拡大する重要な意味を持つという恐れを抱いている。
しかしながら、デモが継続するにつれて、彼らははるかに広義の反政府発言を含むまでにその範囲を広げ、そして引き渡し条例の完全撤回だけでなく「行政長官と立法会選挙の普通選挙やデモ隊の様々な保護にまで要求を拡大させている。

デモ活動はまた規模においても拡大しており、8月12日に香港国際空港で劇的な展開を迎えた。デモ隊が空港を封鎖したことで、発着する何百もの便が3日間にわたって欠航を余儀なくされた。
当然、香港デモの拡大と主要な輸送路線への妨害はすぐにマカオの投資家感情に影響を与え、ウィン・リゾーツのマット・マドックスCEOは「香港発着の何百もの便が欠航となり人々が旅行をためらうとなれば、プレミアム層の事業に影響が出るだろう」とコメントを出すに至った。
ウィン・マカオのイアン・コクラン社長は「香港で起こっていることが事業に短期的な影響を及ぼすことになるのは明らかだ。香港-マカオ間の人々の移動に混乱が生じており、これは少なくともあと数週間は続きそうだ」と付け加えた。
しかし、初期の兆候では、デモがマカオのゲーミング収入に与えた影響は当初恐れられていたよりもはるかに小さいものだった。JPモルガンのアナリスト、DS・キム氏、ジェレミー・アン氏そしてクリステ ィン・ワン氏のレポートの中でその状況が暴かれている。アナリストは「夏季休暇周辺の季節的な好調のおかげで、カジノへの人の流れにまだ目に見える減少は起こっていない」と述べている。
そして、彼らはこのように続けた。「GGRへのどれくらいの影響を話しているのか?我々は香港のデモがマカオのGGRに与える影響は1桁半ば程度だと見積もっている。これは顧客がマカオへの代替の交通手段を見つけるにつれて徐々に消えていくはずだ」。
JPモルガンは、マカオ訪問の一般的傾向に基づいてこれらの数字を導き出している。同投資銀行は2019年のマカオへの合計訪問客数はおよそ4,100万人になると予想しており、その中で香港からの訪問客はたった18%程度だ(70%は中国大陸から)。カジノ収益に関しては、中国大陸からの訪問客がGGRの約85%を占めていることを考えれば、その影響はさらに小さい。
輸送手段についてJPモルガンは、大陸からマカオを訪れる客の12%から13%が香港を経由しており、そのうちの8%から9%が最近開通した港珠澳大橋(HZMB)を利用し、残りの4%から5%がフェリーを利用していると述べる。
しかし「ゲーミング需要への実際の影響は訪問数への影響よりも小さいはずだ。その理由は、(1) 現在港珠澳大橋を利用している人たちは単に深セン空港(マカオまで直行フェリーで60分以内)または珠海空港(マカオまでバスで50分)経由で旅行することで香港空港を避けることができる。(2) 香港フェリーを利用する中国人訪問客はどちらにしても一般的にパッケージツアー客または(非常に)ローエンドのプレイヤーである」

注目すべきは、香港国際空港で「座り込み」が行われている間、JPモルガンとサンフォード C バーンスタインの両方が、マカオカジノの一日当たりの平均収益がおよそ8億7,000万パタカになると予想しており、これは8月の最初の2週間の平均7億9,000万パタカよりも大幅に高い数字となっていることだ。
反対に、継続する米中貿易戦争や、中国メディアがVIPのトップ事業者であるサンシティー・グループが中国人顧客に違法にオンラインゲーミングとプロキシー・ベッティングを提供していたと伝え、それによってジャンケットへの監視が強化されるなど、様々な要因があったとはいえ、7月のマカオGGRの3.5%の減少は予想をかなり下回る数字だった。サンシティ―はそれらの疑惑を否定したが、世界中にある全てのVIPクラブにマカオの法律を適用するとも約束した。
少なくとも今のところは、香港デモのマカオへの影響は大幅に抑えられているようだ。しかし最近の様子を見るに、このドラマが近いうちに終わりを迎えることはなさそうである。