オーストラリア企業のプレイアップがグローバルエコシステムと独自の暗号通貨を通じてオンラインゲーミングの様相を変化させようとしている。
ダニエル・シミック氏は、2015年にアメリカへの短い旅をスタートさせた時には、世界のファンタジースポーツ界を支配し、オンラインくじを変化させ、ギャンブルにおける暗号通貨の未来への道を切り開くアイデアを持ち帰ることになるとは思いもしていなかった。
4年の歳月を早送りすると、オーストラリアの起業家が起こした事業、プレイアップ(PlayUp)は年間約3億豪ドル(約226億円)を売り上げ、プレイチップと呼ばれる独自の暗号通貨を立ち上げ、アメリカ、イギリス、インドそして中国で事業を行いながら、活動範囲を世界へと広げている。
シミック氏はシドニーにある自身のオフィスからこのように説明する。「プレイアップは基本的に無料プレイとフィアット(法定)、暗号両方の通貨による有料プレイを行うオンラインゲーミングビジネスです。
当社は、可能性のあるどんな要望にも応える一連の製品を提供するだけでなく、当社の異なるゲームの全てに付随する、一度限りのKYC・AML・登録の全てが組み込まれたデジタルウォレットを使用することによって、グローバルベースで全ての人にサービスを提供する単一のポータルを築こうとしています。
その実際のスマートさとは、自分のいる管轄地域内で何ができるかということがウォレットの中に入っているという点です。アメリカにいて、その州内ではファンタジースポーツはプレイできるがスポーツで賭けを行うことは出来ないという場合、ウォレットは単純にスポーツへの賭けをさせないようにします。
それはプレイしやすさの問題であり、プレイヤーが何をしたいかを決められるということです」。
プレイアップモデルが「全員に何か」を提供するという単一のグローバルエコシステムを描く一方で、当初のコンセプトは、はるかに規模の小さいものだった。
2015年の米国旅行でデイリーファンタジースポーツ(DFS)の可能性を見出した後、シミック氏はオーストラリアに戻って独自のフ ァンタジースポーツソフトウェアの開発に乗り出そうとしていた。ソフトウェアは着手した段階から将来への可能性を示していたが、ジ ェームス・パッカー氏のクラウンベットが所有するドラフトスターズ(DraftStars)というDFS事業のライバル社の立ち上げと時期が重な った。
シミック氏は「彼らが参入し、マーケティングに相当額の資金を投入したことで、当社はマーケットからはじき出されました。だからこちらは自分たちの力をマーケティングではなくテクノロジーに集中させ、クラウンベットがオーストラリアのDFS市場を教育する間静観することに決めました」と当時を振り返る。
ちょうどこの頃にシミック氏は、レヴォ(Revo)という会社の商号、プレイアップを偶然見つけた。レヴォは約1億豪ドルを投入してアジアで独自のファンタジースポーツビジネスを拡大しようとしていたが失敗に終わっていた。
収益で苦戦する中、プレイアップがソーシャルメディアコミュニティの間でまずまずの数のフォロワーを獲得していたことに気が付いたシミック氏は、その資産を購入し、彼が「ファンデュエル(Fun-Duel)やドラフトキングス(DraftKings)とちょうど同じくらい優れている」と説明する独自技術を実行に移した。
シミック氏はこのように振り返る。「発進したその瞬間から、ユーザーがこぞって登録し始めました。今では100以上の国々から100万以上の人が登録しています。これらの顧客は現在全員が無料プレイですので、次は当社が一歩ずつゆっくりと進めている有料モデルに転換させていかなければなりません。
プレイアップモデルの中心には、独自の暗号通貨「プレイチップ」がある。2018年にスタートしたプレイチップは、その有料プレイと無料プレイ両方の賞金プールを共通化する必要性から生まれただけでなく、プレイチップの数あるベッティングサイトを通じて他にはないレベルの柔軟性を提供する。2018年4月にプレイアップがクラウンベットから取得したドラフトスターズを筆頭に、それらサイトは現在ファンタジースポーツをはるかに超えてスポーツくじ、競馬、eスポーツそしてオンラインカジノにまで拡大している。
シミック氏は、「我々が気が付いたのは、それぞれが5,000万ドルを売り上げる5社を買収したとき、売上の合計は2億5,000万ドルになるが、以前は5か所分の諸経費がかかっていたものが今は1つになったということです」と説明する。同氏が取得した企業にはオーストラリアに拠点を置くClassicBet、Betting.Club、TopBettaそしてMadBookieなどがある。
「それらの会社を買収することによって、我々は一晩でギャンブラーの巨大データベース持つ利益を生み出す会社へと変化させました。そして当社のエコシステムは、プレイヤーがいる場所、そしてその場所で許可されているプレイによって、その管轄地域を対象に、スポーツくじ、競馬、ファンタジースポーツそしてカジノを提供できるグローバルエコシステムなのです。
グローバリゼーションとは別に、シミック氏は、プレイチップコンセプトの良さは、3つの異なるプレイヤータイプをターゲットにする能力があることだと語る。それはソーシャルプレイヤー、伝統的なフィアット通貨のプレイヤー、そしておそらく最も重要になるのが「 多額の資金を持ち、つまるところ根っからのギャンブラーで、暗号通貨の世界にいる人たち」だ。 プレイアップがプレイチップを20以上の暗号通貨取引所に、しかもここ12か月間で上場させる後押しをしたのが、この最後のカテゴリーだ。
シミック氏は、「かなりの相場師、つまりはギャンブラーでない限り、現時点で暗号通貨に手を出す理由は他にないと思います。現在、まだ現実的な使用目的を持たない人たちが保有する暗号通貨は約1,800億米ドルにのぼります。
我々はそのマーケットに対応し、プレイチップのことを知ってもらう努力をしています。そのための最適な場所というのが、暗号通貨界にいる人たちが集まる取引所です。当社の暗号通貨モデルは、暗号通貨界にいる人たちに当社のサイトにギャンブルをしにきてもらうというものです。上場し、プロダクトを出して、取引所を通じてプレイチップのことをすでに知っている人たちに宣伝します。そうすることによって、我々という存在に慣れ親しんでもらう仕組みができあがります」と付け加える。
オーストラリアとインドですでにベースを築き上げたプレイアップは、その活動範囲を急速に世界へと拡大させており、イギリスでの営業ライセンスと共に、急成長する米国のスポーツくじ市場にも確実に狙いを定めている。
同様にプレイアップのファンタジースポーツやeスポーツ製品がアジア全土で門戸を開きはじめており、一方ではソーシャルゲーミングスペースにおいて中国を主要なターゲットにしている。そしてその全てがプレイアップのエコシステムを通じて1つにまとまっている。
シミック氏は、「我々は全ての人を当社のエコシステムに向かわせて、そこから彼らがやるべきことができるという形にもっていけるよう努力している」と語った。