2025年国際博覧会(大阪・関西万博)の開催と統合型リゾート開業への期待感でかつてないほどのビジネスチャンスが広がる大阪。そのシンボル「大阪城」も変わりつつある。
この6月28日から29日にかけては大阪市で世界20カ国・地域首脳会議「G20サミット」が開催され、関西の知名度はますますアップした。この流れをさらに加速させるのがインバウンド客と相性の良い 、 2024年夢洲に開業予定の大阪IRだ。
すでに、これを見越して外資系ホテルや国内の老舗、新興ホテルも相次いで進出。大阪を代表する繁華街のキタとミナミはもちろん、IRの開発によって”ニシ”にも目が向けられている。そんな中、新たな観光スポットとして脚光を浴びつつあるのが”ヒガシ”といわれる大阪城周辺だ。
もともと大阪城は市が管理し、ランニングのメッカになるなど市民の憩いの場所として定着していたが、それ以下でもそれ以上の存在でもなかった。契機は2012年に観光拠点としての重要エリアに指定されたこと。その後2015年に指定管理者制度を導入したことで、劇的に変化して行く。
この制度は行政・企業・市民が連携して公園を運営していく「パ ークマネジメント」という概念。民間に委託されたことで、それまでの守りの姿勢から、さらなる魅力向上へ、攻撃に打って出た。実際に大阪城は海外での人気も高まり、今年6月までの3カ月間、ラスベガスにあるMGMリゾーツのべラージオで巨大レプリカが展示されてもいる。
指定管理者として運営するのは大阪城パークマネジメント株式会社。同社は大和ハウス工業や電通、読売テレビなどが共同で設立し、市と20年間の契約を結んでいる。
「大阪城の魅力を向上させ、収益を上げて納金し、さらに投資していく考えです。施設面は完了したので、これからはイベントを増やすなど、内容を充実させていきたい」と同社の平栗豊氏がIAGに意気込みを語った。
まずは既存のものに息を吹き込んだ。コンビニエンスストアのローソンを公園内の8カ所にオープン。ものものしかった旧陸軍の建物も飲食や屋上バーベキューが楽しめる「ミライザ大阪城」として明るく生まれ変わった。ちなみにこの建物、昭和6年(1931年)に大阪城天守閣が再興された際、寄付150万円(GDPを基準にした現在の貨幣価値では約24億円)のうち80万円(現在の貨幣価値で約13億円)を費やしたとされる。つまり、こちらの建物費の方が大阪城より高かったことになる。

新たな施設もつくった。17年には「ジョー・テラス・オオサカ」をオ ープン。この5月には飲食施設「大阪城下町」も設け、訪日客に人気のラーメンや好みの部位が選べる和牛ステーキ店、忍者体験ができるアトラクションも用意した。2018年春には園内南東にある森ノ宮噴水エリアにベーカリーやカフェを新設。ナイトタイムエコノミ ーの一環として夜の大阪城を冒険する「サクヤルミナ」も人気だ。
今年に入ってからは2月にクールジャパンパーク大阪による大中小3つの劇場が完成。特に「WWホール」では訪日客でも楽しめる公演「KEREN」を開催している。ケレンは歌舞伎の世界で奇抜な演出を指す言葉。日本の伝統と最新のマルチメディアを組み合わせたノンストップのショーだ。
確かに、奇抜でテンポはいい。だが、何度見ても楽しいエンターテイメントかと言われれば、疑問符がつく。大阪観光局MICE専門官の東條秀彦氏も業界全体の課題として「世界に通用するものでないと厳しい。洗練されたものをいかに提供できるか」と話す。
いずれにしろ、大阪にIRができれば、人、モノ、カネの流れが変わる。魅力向上によって、現時点でも関西国際空港を利用した訪日客の7割までもが訪れるようになった大阪城。民間に委託される前に200万人を切っていた大阪城天守閣(入場料600円)の入場者は2017年には実に275万人に達している。
「大阪城は(見た目で)分かりやすくてウケるのでしょう。これからは歴史や文化、さらに周辺の面白さも含めて終日飽きない場所にしていきたい」と大阪城パークマネジメントの平栗さん。ここ大阪城の本丸御殿は幕末、徳川幕府15代将軍慶喜がイギリス、フランス、オランダの公使をもてなしており、いわば日本のMICEのはしりともいえる場所だ。「 様々な会場があるので会議やパーティーとして海外の方にも利用していただければ」と平栗さんは期待している。