新元号「令和」とともに日本型IRが一気に動き出す。2024年開業を目指す大阪府市は全国に先駆け、4月25日から8月まで事業者から事業コンセプトの募集を開始。今秋の正式公募につなげていく。果たして、選定の決め手となるのは何なのか?
平成最後の統一地方選が終わり、日本型IRの輪郭がおぼろげながら見えてきた。維新が圧勝した大阪は知事と市長が入れ替わっただけで引き続き開業へ一直線。北海道も反対派の知事が落選し、道は開けた。

3カ所とされる候補地を列挙してみると官民一体なのは大阪、和歌山、長崎。そして北海道。ただ、スケールメリットのある関東圏は侮れない。特に横浜は”影の主役”として業界内での人気は根強く、千葉、東京も可能性は捨てきれない。おぼろげ、というのはこの点を指す。
今後のスケジュールを確認するとこうだ。政府はIRの認可、監督をする「カジノ管理委員会」を7月1日に設置。同時に立地区域の選定に欠かせない「基本方針」を公表する考えだ。その中には経済効果や観光振興、ギ ャンブル依存症対策をはじめとした項目がびっしりと並ぶことだろう。
誘致を目指す都道府県・政令都市はこれらを受け、最終的に公募で選んだ事業者と共同で経営計画を策定し、国に申請。国交相がこれを評価し、IR設置を認定する。このあたりの時間を読むのは非常に難しい。当初の政府案では認定作業は23年前後とされ、開業は25年後半というのが一般的な見方だった。
海外IR幹部が一堂に会し、商戦ヒートアップ
ただし、25年に大阪・関西万博を控える大阪のロードマップはいささか異なる。24年のIR開業が必定。「建設工事には3年はかかる」と海外業者は話しており、そのため、20年春に事業予定者を決め、21年に着工する必要がある。そこで当初は、この4月に事業者からの提案を前倒しして募集するとしていたほどだ。
選挙戦で動きは一時中断したが、府市は早速4月24日に公募要項を発表。25日から8月まで事業者から具体的なコンセプトを募る。また評価を下す事業者選定委員会の構成にも着手した。
すでに大阪IR推進局はIRの事業性や開発条件などについて、事業者からのべ200件を超える提案や質問を受けている。折しも5月15、16日にはインテックス大阪で「統合型リゾート産業展」が開かれ、大阪に熱視線を送る海外大手IR業者の幹部クラスが一堂に会する。また16 、17日には東京でもジャパンゲーミングコングレスがあり、商談機会には事欠かない。

「MGM1強ではない」決め手はこれだ
そこで気になるのが選定の決め手だ。まず海外事業者は地元の企業とコンソーシアムを組んで入札に参加する。その上でIR開業に向け、最重要視されるのは「魅力増進施設」および「送客機能」だ。実際、日本が参考にするシンガポールにおいても事業者選定の評価基準として投資額の規模などより、こちらの方が重要視されていた。
ラスベガス・サンズが運営するマリーナベイ地区、ゲンティン・シンガポールが落札したセントーサ島地区では観光施設と産業貢献度の配点が、それぞれ40%と45%。施設のコンセプトとデザインが、30%と25%と実に全体の7割を占めていた。「勝負の分かれ目はここ」と関係者が力説するのも当然か。
目下のところ、大阪での有力プレーヤーはMGMリゾーツとオリックス。この両者がコンソーシアムを組むことが分かった3月下旬には、ライバル社からも「MGMで決まり」との声が出たほどだ。
次に名乗りを上げる日本企業は?
しかし、本当の戦いはこれからのようだ。ある専門家はこう言う。
「カギはシンガポール。実際にシンガポールではゲンティンが勝っており、負けたMGMは脅威に感じている。財務体質もゲンティンの方が良く、決してMGMの1強ではない。メルコやギャラクシーなども黙っていない」
ラスベガス・サンズもまた、直近の決算報告で立地を大阪に絞った。
国内のプレーヤーとしてはセガサミー、大林組、大和ハウス、京急などが今後クローズアップされそうだ。これらがどの事業者と組んで、どこを狙うのか。
いずれにしろ開業までには区域認定された自治体がIR事業者と実施協定を締結し、カジノ管理委員会が背面調査。免許を付与するプロセスを踏む。その途中で脱落する事業者も出てくるかもしれないが、順調なら日本型IR開業は24年にまずは大阪。新札導入とほぼ同じタイミングとなる。まさに新時代の到来だ。