最終ランキングに残った50人と我々が検討した多くの人物のほかに、特に注目に値する際立った人物が何人かいた。ここで紹介する人達は、益々その輝きに磨きがかかっており、注目しておくに値する会社に属してもいる。また場合によっては、ここ数カ月のニュースで話題になっている人物もいる。
テッド・チャン
日本開発部門最高執行責任者
ギャラクシー・
エンターテインメント・グループ
高い評価を受けていたメルコリゾーツの元幹部テッド・チャン氏は、ギャラクシー・エンターテインメント・グループの日本でのIRライセンス獲得の取り組みを先導している。ライバルたちの離脱につながっただけではなく、ギャラクシーの優れたバランスシートを際立たせた新型コロナの拡大の結果、その取り組みは大幅に強化されているようだ。時が来れば日本のギャラクシーからさらに詳しい発表があるかもしれない。
デイビッド・チョウ(周錦輝)
非業務執行取締役共同会長
マカオ・レジェンド・
デベロップメント
デイビッド・チョウ氏は、2006年に自身が立ち上げた会社から大きく身を引いた。昨年初めにマカオ・レジェンド・デベロップメントのCEOの職を辞任し、12月には約30%持っていた株式をたった10%に満たない数にまで減らした。これはタク・チュン・グループトップで、マカオ・レジェンド現CEOのレヴォ・チャン氏による買収の一環だ。チョウ氏はチャン氏と並ぶ共同会長として取締役会には留まっており、バンキングとカーボベルデでの開発の機会には変わらず関心を寄せていると言われている。
クラレンス・チャン
執行役員
メルコ・インターナショナル・
ディベロップメント
元投資銀行家でM&Aスペシャリストのクラレンス・チャン氏は、メルコチームの一員として約20年を過ごしてきた。2003年にメルコ・インターナショナル・ディベロップメントに入社し、2006年に取締役に就任したチャン氏は、メルコリゾーツ、メルコリゾーツ(フィリピン)そしてスタジオシティ・インターナショナルの取締役も務めている。以前シティー オブ ドリームス マニラを監督する同社のフィリピン法人の社長兼会長を務めていたが、現在はマカオに戻り、今年、広東省中山の数千億円規模の住居、エンターテイメント、ホスピタリティ多目的複合施設へのメルコの関わりを監督する仕事を引き受けた。
リ・チ・キョン
マネージングディレクター
マカオジョッキークラブ
マカオゲーミング業界で長年影の実力者でありつづけたリ・チ・キョン氏はおそらく、マカオジョッキークラブの監督役、そしてアジアのカジノ中心地で唯一の認可スポーツくじ事業者であるマカオ・スロットの有力者として有名だろう。しかし、彼の利害の範囲はさらに遠くにまで広がっている。SJMホールディングスとの繋がりが深い同氏は、謎めいたジャンケット事業者であるゴールデングループの主要株主であり、マカオ・レジェンド・ディベロップメントに持つ18%などなど多数のサテライトカジノに株式を保有していると言われている。
マカオ出身のバージニア・ラム氏はマカオのカジノコンセッション保有者で最初に幹部になった女性のうちの1人で、2000年代半ばから後半にサンズ・チャイナ、クラウンそしてスターワールドで経験を積み、その後2010年にサンズに戻り、出世街道を走っている。マカオ市場シェアトップのロイヤルティクラブの立役者であり、プレミアムセグメントに重点を置いている。マカオ特別行政区政府が才能豊かな地元出身者のための出世の道筋を開発するという望みをはっきりと述べている中、ラム氏はその戦略が実践されている主な例になっている。
アンドリュー・ロー
最高投資責任者兼執行役員
サンシティグループ
アルヴィン・チャウCEOと並んでサンシティグル ープの公の顔になっている人物の1人がアンドリ ュー・ロー氏だ。旗艦施設であるベトナムのホイアナなど、グループの統合型リゾート世界展開活動の立役者。カナダで学んだロー氏は、ロシアにあるティグレ デ クリスタルの過半数株主、サミット・アセント・ホールディングスの執行役員兼副会長で、今年、現在1,000億円以上をかけてマニラでホテル・カジノプロジェクトを開発するサンシティのフィリピン法人、サントラスト・ホーム・ディベロッパーズの取締役に就任した。
スティーブ・マッキャン
CEO兼マネージングディレクター
クラウン・リゾーツ
不動産開発大手レンドリースのグループCEOを長年務めたスティーブ・マッキャン氏は、5月にクラウン・リゾーツのCEO兼マネージングディレクターに就任したことで、自身が背伸びしすぎていないことを祈ることになるだろう。最初の仕事の1つがビクトリア州の王立委員会の前に立つことで、そこでクラウンの企業文化を徹底的に見直すための計画を説明した。明らかに同社はマ ッキャン氏を適任者だと見ており、前任者のシャビエル・ウォルシュ氏が王立委員会の厳しい尋問を受けて引責した後、8月にクラウン・メルボルンのCEOにも就任している。
スタンレー・ホー氏とアンジェラ・レオン氏の息子であるアーノルド・ホー氏は、SJMの最高執行責任者補佐そして、SJMのグランド・リスボア・パレスの横に建つ約1,700億円をかけたリスボエタ・マカオを今年オープンさせたマカオ・テーマパーク・リゾートの取締役を務める。リスボエタは現在非ゲーミング施設になっており、中には屋内スカイダイビング施設、ジップラインそして小売店などがあるが、同社は近い将来ゲ ーミングを加える可能性が高いことを示唆している。続報をお見逃しなく。
アイリーン・ルイ
グループ取締役 – 人事および管理
ギャラクシー・
エンターテインメント・グループ
ギャラクシー・グループの人事および管理を担う取締役であるアイリーン・ルイ氏はGEG会長ルイ・チェ・ウー氏の娘であり、副会長フランシス・ルイ氏の兄妹でもある。有能なキャリアウーマンで、彼女の経歴は多岐にわたる。ルイ氏は気付けば、社内で最も年長の家族となっていることが多く、これは最終的には家族問題に帰する会社にとっては重要なポイントだ。第七代中国人民政治協商会議の珠海市委員でもある。
呉文新
会長兼CEO
センチュリー・エンターテインメン
ト・インターナショナル
マカオのゲーミング史において悪名高い人物となっている呉文新氏は、初期かつ一部の人が暗黒と呼ぶ時代のジャンケット業界を形作るうえで重要な役割を果たした。後に、自分の会社であるエイマックス・インターナショナルを通じてニューセンチュリーホテルのギリシャ神話カジノの支配権を手にしたものの、運営会社との紛争の中、休業したままになっている。エイマックスはその後、社名をセンチュリー・エンターテインメント・インターナショナルに変え、呉文新氏はその焦点をカンボジアへと切り替えている。カンボジアでは、中国が支援するダラ・サコー開発の中で新たなカジノ開業を計画している。
ダミカ・ペレラ
会長兼マネージングディレクター
バリベル・ワン
スリランカで最も裕福な男性は、国内に5つあるカジノライセンスの3つを所有し、バリーズ・コロンボ、ベラージオ・コロンボ、MGMコロンボを運営している。しかしクイーンズベリーに約220億円の統合型リゾートを建設するという計画は、2017年に政府によって打ち砕かれた。ペレラ氏にはやることがたくさんあるため、それによって彼がひどく動じることはないだろう。現在、少なくともスリランカにある23の大企業の株を持 っており、製造業から金融までを網羅している。
アンドリュー・タン
会長
アライアンス・グローバル・グループ
1993年にアンドリュー・タン氏が創業したアライアンス・グローバル・グループは、リゾートワールド・マニラを運営するトラベラーズ・インターナシ ョナル・ホテル・グループの過半数株主になっている。また、ゲーミングに関しては自社で事業にも乗り出すところで、リゾート地ボラカイ島にカジノリゾートを開発する計画だ。その間、子会社のPHリゾーツ・グループがセブ島で統合型リゾ ート、エメラルドベイを開発しており、2023年初頭のオープンを目指している。
ローレンス・テオ
最高執行責任者兼エグゼクティブバイスプレジデント
ロッテ・ツアー・デベロップメント
メルコとクラウンが提携していた時代にメルコリゾーツで幹部を務め、アルティラ・マカオを監督していたローレンス・テオ氏は、韓国のロッテ・ツアー・デベロップメントが切望するゲーミング経験を同社で活かすという役割を担っている。入社してからのテオ氏の焦点は、済州ドリームタワーだ。約1,500億円をかけたこの開発は昨年12月にソフトオープンし、今年6月に新たなカジノが加わった。コロナ禍でのオープンは理想的ではないかもしれないが、ロッテ・ツアーは島の回復を後押しするために、5つ星のグランドハイアットホテルなど、施設の高級面の強化を進めている。
サンズ・チャイナの元上級役員で、2010年6月から2016年4月までCFO、エグゼクティブバイスプレジデント、執行役員を務めたトー氏は、シャングリラ・アジアで短期間過ごした後、昨年後半にSJMに参加した。SJMの子会社でSJMのマカオゲーミングコンセッションを保有するソシエダーデ・デ・ジョゴス・デ.・マカオの最高執行責任者 (財務&開発部)を3カ月だけ務め、その後親会社のCFOに指名された。SJMは、5,500億円をかけたコタイのIR、グランド・リスボア・パレスをついに開業させ、今後数年間に大改革する構えであるようで、トー氏はその中心に立つと予想される。
スタンレー・ホー氏のVIPルーム初進出を支えた古い友人のアルバート・ヤン氏は、そのお返しとしてホー氏のコンセッションの下で運営するサテライトカジノを与えられ、それを最大限に活用した。ヤン氏のグランド・エンペラー・ホテルは、マカオ半島の素晴らしいロケーションにあり、ホー氏の旗艦施設であるリスボア複合施設のすぐ近くに位置している。エンペラー・エンターテイメントはSJMとの間で、2022年6月までグランド・エンペラーのカジノを運営する契約を結んでいるが、その後マカオのサテライト事業者たちがどうなるかはまだ分からない。
ソニー・ヤン (楊海成)
会長兼執行役員
サクセス・ユニバース
おそらく、サクセス・ユニバースの今年最大の動きは、ビットコインへの数億円の投資だった。しかし、世界で最も有名な暗号通貨が期待に応えられないとなれば、マカオの統合型リゾート、ポンテ16が当てにするべき妥当な選択肢だろう。コロナ禍で業界の他企業同様苦戦しているにも関わらず、インナーハーバーにあるこのユニークな施設には、コタイの強豪たちの力を上回る成績を残した歴史がある。ポンテ16はかなりユニークな立地から恩恵を受けており、その2.3ヘクタールの土地には、2021年6月30日時点で屋外プール、フィットネスセンター、サウナ、高級スパ、9軒のレストラン、カフェ、ラウンジ、そして7つの多目的会議室、93台のゲーミングテーブルを備えている。
サンズ・チャイナの元社長兼CEOで現在はハードロック・インターナショナルのアジアCEOを務めるエド・トレーシー氏は、最大のターゲットである日本を含むアジア地域ポートフォリオの拡大を担当している。現時点ではその最大のターゲットである日本での機会が失われたように見えるものの、街のうわさではハードロックはまだ終わってはいないという。ハードロックがIR開発を希望していた北海道の知事が、北海道も将来IR誘致に再チャレンジする可能性があることを示唆しており、ハードロックは準備を整えて待っていることだろう。
ランク・ホールディングスのラヴィ・ウィジェラトネ会長は、スリランカの5つのカジノ営業権のうち2つを所有する「カジノ王」の1人で、長年、不動産から水力発電、物流、輸送拠点までの全てに利害を持つ最も権力のある人物に1人になっている。61歳のウェジェラトネ氏は、1994年にスリランカ最大かつ初のカジノ、スター・ダストを購入し、その後すぐに2軒目となるカジノ・マリーナ・コロンボを建設した。
中国系フィリピン人の実力者であるキム・ウォン氏は比ゲーミング業界の至るところでその存在感を示している。特にミダスカジノでのジャンケット事業、そしてイースタンハワイのグループ企業の中でもオリエンタルゲームといった海外向けのオンライン事業者などで影響力がみられる。その影響力の証が、中国メディアによるオリエンタルゲームの事業への監視、そしてバングラデシュ中央銀行が保有するニューヨーク連邦準備銀行の口座からハッカーによって現金が盗まれた事件からの深刻な影響を彼が回避できているというものだ。8,100万ドル(89億円)もの資金が、ウォン氏のものを含むマニラのVIPル ームへと送られた。その後ウォン氏は政府に数億円を返金し、上院と反資金洗浄評議会による調査を黙らせた。フィリピンのオンライン業界はかなりの混乱状態にあるが、ウォン氏は業界がどこに向かうかを知るのに役立つ指針であり続ける。
ヤン・ジフイ
会長兼執行役員
ランディング・インターナショナル
韓国の人気リゾート地済州島で営業する企業にとって、ここ数年は非常に厳しく、特にランディング・インターナショナルとその済州神話ワールドIRにとっては厳しい日々となっている。なおも、会長のヤン・ジフイ氏は、窮地から脱する名人であることを証明しており、3カ月間秘密裏に中国当局に拘束された後、2019年に突然再び姿を現したり、2020年に報道された買収の試みを回避したりするなど、うまく切り抜けている。ここ数年は新型コロナが大きな打撃を与えており、1月にランディングカジノのVIPルームから1,340万米ドルが消えた事件(従業員に盗まれたと言われている)もかなりの打撃となっている。
要チェック
「パワー50」「次回期待の5人」および「注目すべき顔ぶれ」を合わせた75人に加え、「要チェック」と見ている30人以上のリストもある。このリストは公開していないが、パワー 50に新たに加わる可能性がある人物を確認するのに毎年使用している。この号で発表された75人の中に含まれていないが今後も注目すべきだと思われる人物に心当たりがある場合は、編集長のベン・ブラシュク(bb@asgam.com)までご連絡いただきたい。その人物がまだ「要チェック」リストに載っていなければ、追加を検討したい。