Inside Asian GamingのCEO、アンドリュー・W・スコットが、米国拠点のカジノオペレーターのラッシュ・ストリート・ゲーミングの創業者であり会長のニール・ブルーム氏とCFOのティム・ドレコフ氏と対談し、ラッシュ・ストリートが最近発表した日本北部の北海道でIRライセンス獲得を目指すという計画について議論する。
アンドリュー・W・スコット (AWS): ニール、今日は来てくれてありがとう。まずは、少しラッシュ・ストリートについて教えてもらえますか?
ニール・ブルーム (NB): 当社は本来、主に不動産開発事業を行っています。約600億米ドルの価値に相当する最高級の不動産を開発、投資してきました。例えば、当社はロサンゼルスのセンチュリーシティ、シカゴ・マーカンタイル取引所、多くのフォーシーズンズホテルやリッツカールトンホテルを開発してきました。従って、非常に質の高い不動産開発に精通しています。
約20年前、カジノ開発に関わることになりました。当社の初のプロジェクトは、カナダのナイアガラの滝で、オンタリオ州政府のために10億米ドルの開発を行いました。実際、法律によってオンタリオのいずれのカジノも政府所有である必要がありましたが、彼らは建設・運営を行う業者を必要としていたために、RFP(提案依頼書)で我々が選ばれました。
その後、アメリカでプロジェクトを開始しましたが、地方のカジノのみで、地方都市以外のマカオやラスベガスでは行っていません。当社は、シカゴのクック群唯一のカジノ、フィラデルフィア市唯一のカジノ、ピッツバーグ市唯一のカジノを所有しており、アップステート・ニューヨ ークで付与された4つのカジノライセンスを持つ中の1社でもあります。我々はオールバニや他の都市がある首都圏でのライセンスを勝ち取りました。
リージョナルカジノは、ラスベガスやマカオで建設するそれとは全く異なります。なぜなら、街にカジノを作ったことのない都市へと行くためです。だから、自分たちが開発するものが現地のコミュニティに受け入れられるものであることを確実にしなければなりません。人々が持つ全ての懸念に対処しなければならないのです。本当に街中にゲーミング産業が欲しいのか、犯罪やプロブレム・ギャンブリングを作り出すのではないか、街の雰囲気に合うのかなど。それこそ当社が専門としている分野です。苫小牧で何かするにあたって、北海道は当社がしていることに見事に適合します。だから北海道と苫小牧に照準を合わせたわけです。
AWS: それでは、日本の他のどの地域にも興味はないということですか?
NB: 現時点で興味があるのは苫小牧だけです。そこに全ての力を注いでいます。こう尋ねられたことがあります。「もし北海道が統合型リゾートを欲しくないと決めたらどうするのですか?」 もしそうなったとしたら、他の場所も再考する必要があるでしょう。しかし現時点では苫小牧にフォーカスしています。

AWS: 現地パートナーとコンソーシアムを組む必要がある可能性についてはどうお考えですか?
NB: 現地パートナーと一緒にプロジェクトを行うことには慣れています。実際、これまで開発してきた全てにおいてそうしてきたのです。ニュ ーヨークでは、土地の所有者が土地を提供し、プロジェクトの9.9%シ ェアを持っています(リバーズ カジノ & リゾート)。フィラデルフィアでも、現地パートナーがいますので、現地の人と提携することには何の問題もなく、苫小牧でコンソーシアムの一員なることを期待しています。
どれくらいの割合を当社が持つことになるかについてはコメントできません。過半数になるかもしれないし、少数株主持ち分になるかもしれません。その点については、どれだけ現地の関心が高いかによるかもしれません。東京、大阪、横浜などの大都市では関心がより高いかもしれません。日本の大企業の一部は、より小規模の地方プロジェクトへの関心が低いかもしれません。
しかし、適切なパートナーで、賭博委員会の承認が得られるのであれば良いパートナーは確実に歓迎します。アメリカでの厳しい規制には慣れており、そこでのカジノ事業は大成功を収めました。そして当社の非常に高い基準に見合わない業者とパートナーシップを組むことで、それを危険にさらすようなことは絶対にしないでしょう。
AWS: 北海道でのIR開発のライセンスを勝ち取った場合に、どの程度の投資を考えているかについて教えてもらえますか?
NB: どれくらいの費用が掛かるかは正確には分かりませんが、15億から20億米ドルの間の額になると予測しています。2000ほどの客室、そして当社が所有するであろうホテルやその他全ての施設のために大人数の従業員が必要になることを考えると、15,000人規模の従業員数になるだろうと考えています。
ご存知の通り、日本のIRのルールでは、カジノは全敷地の3%のみと決められているため、当社の不動産の専門知識、当社の不動産開発は、その点に関して我々が考えているものにとって非常に重要です。なぜなら、その条件を満たすために他に多くの不動産を建てなければなりません。そしてそれこそ我々が専門としているところなのです。これまで何十億ドルにもなる非常にハイエンドの商店、ホテル、会議場等の類の建物を建てた経験があり、加えてレストラン、バーなどたくさんの娯楽施設も所有する予定で、その全てが極めて重要になるでしょう。そして、その環境に合う文化的な要素も取り入れる必要があります。
ティム・ドレコフ (TD): 我々が取り組んでいる別の要素で、1つ挙げられるのは、そのエリア、特にその土地の自然美を出来る限り取り込む努力です。それは川や岩と共に森の中にあります。自転車コース、ハイキングコース、ロッククライミングツアー、バードウォッチングといったその自然にあるあらゆる種類のものを考えています。この地方が持つ馬の繁殖や競馬の豊かな歴史を考えて、乗馬センターを組み入れる構想も持っています。
これら全ての文化的要素に加えて、展示場もしくは美術館も検討しています。ニールは、偶然にも世界的に有名な現代美術コレクターで、シカゴ美術館とニューヨーク市にあるホイットニー美術館のメンバ ーなのです。それを生かして、その場所にアート展を持ち込むこともできます。明確な地方の、ローカルな、文化的特色を加えて全ての層にアピールするために、非常に幅広くあるよう努めています。
AWS: 日本はとても現代的で技術的に進歩した社会として有名です。いつか世界中のIRで採用されるような特定の種の技術が日本版IRに含有されている場面は想像できますか?
TD: はい、1つ思いついたのがスキルベースのゲーミングです。日本のこのマーケットには、パチンコとパチスロがあります。それとはかなり差別化される予定ですが、スキルベースのゲーミングのこの要素がここにはあります。おそらく、ここ日本には、伝統的なスロットマシンのソフトウェアとスキルベースのゲーム機をブレンドする新しいゲーミング技術があります。それが我々が考えた一つのアイデアです。
ここ日本で聞いた全く別のアイデアは、プレイヤー追跡です。特にそれがプロブレム・ゲーミングに関係しているためです。このマーケットは、この分野で非常に保護的であることに大きな力を注いでいます。プレイヤーや彼らのプロブレム・ゲーミングへの支出を追跡するためのマイナンバー顔認証ソフトウェアについての話を聞いたことがあります。
その質問でもう一つ思い出したのは、昨夜、自動精算機で宿泊費を支払ったこと。これは初めての経験だったと思います。決済技術、ご存知の通りアメリカのカジノではすべてが現金ベースです。最終的に業界全体でそれは変わっていく。そして私には日本がその最前線にいるのが想像できます。
AWS: アメリカのゲーミング業界で成し遂げたラッシュ・ストリートの業績で、最も誇りに思っていることは何ですか?そしてそれはどのように日本に適用される可能性がありますか?
NB: 我々はリージョナルカジノに特化しており、もしこの中でラスベガスやマカオにあるタイプのIRを希望する人がいたとしても、私たちがそれをすることは絶対にないでしょう。それが北海道もしくは苫小牧の文化や環境に適しているとは思えません。
我々が最も誇りに思っていることに関して言えば、シカゴのオヘア国際空港の近くに建てたカジノがあることです。残念ながら、我々が持つことのできるサイズとゲーミングポジションの数を政府が制限したのですが、非常に高級なカジノを作り、北アメリカのあらゆるカジノの中でゲーミングポジション当たりの最高収入を生み出しています。これまで開発してきたリージョナルカジノの一つ一つが、どの競争においてもゲーミングポジション当たりの収入の点で、一位もしくは、一か所だけ二番目に成功しているという事実を大変誇りに思っています。
明らかに、説明したシカゴの施設は一位です。例えばシーザーのような他の大企業と競争している中でです。より多くのビジネスをしていますが、会社の規模は3分の1です。それは我々が建てたものの質、そして運営方法、お客様に提供しているものの賜物であると考えています。ピッツバーグでも第一位になっています。最近ニューヨーク州で認可されたカジノが4つあり、私たちはその4つのうちの1つを建てる権利を勝ち取りました。約1年前のほぼ同時期に4社一斉にスタートして、我 々は他のどの会社よりもはるかに上手くやっています。
それができる理由の一つに、当社が非常に魅力的なものを作っており、環境に適合している、そしてまた非常に良い運営を行ってきたというものがあると思います。自分たちがやっていること、そしてリージョナルカジノビジネスでとても有名であることを誇りに思っています。
AWS: 日本のIRライセンスを勝ち取る中でラッシュ・ストリートが直面する最大のハードルは何だと思いますか?
NB: 最大のハードルは、我々が興味を持っている地域、苫小牧が手を挙げ、統合型リゾートが欲しいということを確実にすることだと思います。苫小牧市は明らかにそうするとは思いますが、その決定は、最終的に北海道という都道府県レベルで行われることになります。そして北海道では4月に選挙が行われます。彼らが承認することについてはかなり自信があり、確実にその期待を寄せている一方で、それは一つのハードルとして残っています。
もう一つは、発効時の最終的な規制です。多くの重大なルールは理解しており、それには対応できると考えています。最後になりましたが、選ばれること。しかし、プロジェクト全体の97%を占める不動産における当社の専門知識、そして地方開発での当社の実績を鑑みて、選ばれるチャンスはかなり高いと考えています。
AWS: 最後に、入札準備に関してラッシュ・ストリートのこれまでの日本での努力について少しお話してもらえますか?
TD: 私たちは、具体的には約2年前に北海道でのリージョナルライセンスに関する努力の焦点を定め直すことに決めました。私自身、またはニール、またはこの件のコンサルタントパートナー、ザ・イノベーション・グループのスティーブ・リトボーが、過去2年の間にほぼ定期的にここに来ています。また、ここ日本にもコンサルタントチームを持っています。苫小牧に最近事務所を立ち上げたところで、地元の人々の質問に答えることができるよう少なくともパートタイムでそこにスタッフを置く予定です。また積極的に、このプロジェクトのための日本でプロジェクトマネジャーを雇う予定であり、北海道と東京を行ったり来たりしてもらうつもりです。