業務執行取締役社長
サンズ・チャイナ
パワースコア: 1,608
昨年の順位: 8
評価理由
• グループのEBITDAの半分以上を生み出すラスベガス・サンズ子会社の マカオのトップ
• 中国本土にコネクションを持つ経験豊富な政府および政治面での策士
• 不動産開発での広範にわたる実績
グランド・チャム氏がサンズ・チャイナ最高執行責任者の役職を引き継いだものの、ウィルフレッド・ウォン氏はこれまで以上に忙しいと話す。ウォン氏はラスベガス・サンズの子会社で、昨年はグループのEBITDAの59%、純収益の63%を生み出したサンズ・チャイナの社長、そしてマカオトップの座に留まっている。
マカオでのサンズ・チャイナのトップの座を維持するためにやるべきことはまだたくさんあり、そのミッションは今、これまで以上に重要なものになっている。新型コロナの時代、ラスベガスでの回復の遅れ、そしてシンガポールのマリーナベイ・サンズでの会議の重要性を考えると、マカオはLVSにとって最速で正常の状態に戻るチャンスが最も高い場所だ。
22億米ドルをかけたサンズコタイセントラルのザ・ロンドナーへの改装、そして星回りの悪いフォーシーズンズサービスアパートメントを290室のスイートに改装する工事が新型コロナによる経済悪化の中でも続けられている。消費者が戻るにつれて、サンズは再考された施設のさらなるコンポーネントを展開し始める予定で、その中には、こちらも当初はサービスアパートメントとして意図されていたセントレジスタワーにある370室のスイートなどがある。また、以前のホリデーインを600室のスイートのロンドナー・ホテルへと改装し、MICEおよび小売りスペースを追加する予定もしている。
改装の他に、サンズはゲーミングエリアもアップグレードし、ザ・パリジャンにはスイートを追加した。こちらはターゲットとする中間層に留まらない驚くべき人気を見せている。
これら全ての変更が行われてもなお、サンズ・チャイナはコタイにあるゲストルームの半分以上を所有している状態になる。しかしながら、SJMホールディングスがグランド・リスボア・パレスをオープンすると、そのシェアは49%に低下する。小売りに関しては18万6,000㎡近い面積により、さらに大きなシェアを持っており、その全てがコタイの中心部で相互につながっている。
客室、小売、そしてテーマホテルの3つが、依然サンズのマス市場へのアピールにとって極めて重要な要素となっている。サンズ・チャイナは昨年、その利益の58%をマステーブルから生み出しており、別の26%がホテル及びモール事業からであった。ベネチアン・マカオは、現在も観光客にとってマカオナンバー1のカジノアトラクションの座をキープしており、パリジャンにある1/2サイズのエッフ ェル塔やロンドナーのアトラクションも観光客を感動させる要素となっている。プレミアムマス客へのアピール強化のために客室商品のアップグレードが計画されており、ここが、全事業者が新型コロナの回復と将来の成長をリードする可能性が最も高いと予想する領域だ。
これらのプロジェクトが完成すれば、ウォン氏が不動産開発の能力を発揮するスペースはもう残っていない。
彼の過去の経験が関係してくるのがここからだ。ウォン氏は1975年に香港政府でキャリアをスタートさせ、行政機関で出世街道を突き進み、1985年までには1997年の香港返還に関わる主要機関のメンバーとなった。香港特別行政区と中国本土との関係性を支配する基本法(マカオには1999年の中国返還で発効した独自の基本法がある)を含む重要な問題や実際の返還手続きに関して、本土の担当者と協力して作業を進めた。香港返還後、ウォン氏は1997年から2013年まで中国全人代香港代表を務めた。
マカオのゲーミングコンセッションが2022年に再入札を迎える中、サンズ・チャイナは慎重に扱うべき政治問題を切り抜ける際にウォン氏のスキルを活用することができる。現在の米中貿易摩擦は緩和する可能性がある。しかし、マカオが米事業者からの業界の知識や信用というものを歓迎していた2002年と比べると、今回の再入札では、米事業者たちははるかに大きな議論を引き起こすことになりそうだ。時代が変わりゆく中、サンズ・チャイナは幸運にもウォン氏を味方につけている。