Inside Asian Gamingがアジアンゲーミングパワー50を初めて発表してから11年が経った。そしてその後の道のりというのは大変素晴らしいものであった。
2008年に始まったこのイベントは、我々の業界を動かす人物を楽しくかつ画期的な方法で確認するもので、関係者全てが心待ちにする年に一度の大イベントへと進化してきた。アジアンゲ ーミングパワー50をまとめる作業は、興味深く、学ぶことの多い、しかし骨の折れる疲れる作業でもあり、かつ「正しく行う」ためには大きな責任が伴う。
2019年は我々が言うところの「ビッグ50」の12回目の選定となり、始まった頃を振り返って、当時からどれだけ大きく変化したか、または変化していないかを考えることは楽しいものだ。2008年のアジアンゲーミングパワー50にランクインした人物の中で、2019年になってもなおランクインしているのは14人しかいないと聞くと驚くかもしれない。しかし、当初の上位10名のうちの6名が現在もランクインし続けている。

日本、ベトナム、カンボジアそしてその他アジア諸国での新たなフロンティアの台頭など、アジアのゲーミング業界が現在も拡大を続けていることを考えると、11年先の2030年に誰がランクインしているかを是非見てみたいものだ!
進化
2008年のアジアンゲーミングパワー50の誕生はこの地域のランドベースカジノ業界で起こった改革と時を同じくしており、ザ ベネチアン マカオが2007年にその扉を開いてから12カ月後のことだった。
それ以来、たった6.7㎢しかない小さな土地が、地球上で最も豊かな場所、世界クラスの統合型リゾート、シティー オブ ドリームス、ギャラクシー・マカオ、MGMコタイ、サンズコタイセントラル、スタジオシティ、ウィン・パレスそしてザ・パリジャン・マカオのホームとな った。
この大きな成功を収めたアジア統合型リゾートモデルは、その後この地域に山火事のごとく広がっていった。近年では、フィリピンがアジアで最も急速に成長する市場となっており、同国にある4つのIR、ソレアリゾート&カジノ、オカダ・マニラ、シティー オブ ドリームス マニラそしてリゾートワールド・マニラの全てが上昇気流に乗 っている。
シンガポールでは、リゾートワールド・セントーサとマリーナベイ・サンズが今や世界的に有名なランドマークとなった。パラダイス シティと済州神話ワールドは韓国に統合型リゾートのコンセプトを持ち込み、さらに2つの施設が今後数年間で仁川にオープンする予定だ。その一方で、ベトナムはサンシティーのホイアナ開発が2020年に開業するのを首を長くして待っており、カンボジアのナガコープは需要に追いつくためにさらにいっそうの拡張を視野に入れているために今もなお世界の羨望の的であり続けている。
そのような目覚ましい発展にも関わらず、過去11年間アジアンゲーミングパワー50のトップの座はたった4人の人物によって占められていた。その4人が
- 2008年:スタンレー・ホー博士
- 2009年:タン・スリ・リム・コック・タイ氏
- 2010年:シェルドン・アデルソン氏
- 2011年、2012年:フランシス・ルイ氏
- 2013~2018年:シェルドン・アデルソン氏
- 2019年:答えは記事の後半で!
「2019アジアンゲーミングパワー50」では、業界にとってまた大きな出来事が多くあった年であったために、ランキングには多くの動きが見られている。この一年の最も重要な出来事の中には、メルコリゾーツがマカオでの元パートナーである豪クラウンリゾーツの19.99%の株式を取得したこと、サンシティグループがロシアのIR事業者であるサミット・アセント・ホールディングスの大株主になったこと、パンジー・ホー氏率いる同盟がSJMホールディングスの親会社であるSTDMの過半数株を獲得したこと、シンガポールがマリ ーナベイ・サンズとリゾートワールド・セントーサに対して大規模拡張計画に着手するための許可を与えたことなどがある。

ダイナミック
パワー50ランキングは成功に甘んじるための場所ではない。会社の永続年数そして役職の任期の長さに与えられるポイントが一部あるものの、ランキングは主に過去12カ月間の活動に焦点を当てている。「過去15年間に何をしてきたか?」ではなく、「今何をしているのか?」、「最近何をしたか?」が重視される。 そのように、パワ ー50は非常にダイナミックであり、様々な理由でランキングが上下する。
毎年リストの作成中に繰り返し起こる現象が、「自社の事業が拡大したので、ランキングがアップするはずだ」という誤った推論だ。実際のところは、上げ潮では全員が上がるということだ。原則として、ランクインしている人の大半が毎年成長するビジネスを運営しており、リスト内でのランキングを維持するだけでも年間での成長が求められる。毎年毎年同じことをして、同様の結果を達成している人は、年を経るごとにゆっくりとランクダウンしていく。
ジレンマ
このリストをまとめることにはかなり慣れてきているものの、アジアのゲーミング業界が成熟し、差異がさらに微妙になるにつれて、毎年作業の複雑さは増しているようだ。一体どうすればより小規模な施設の単独オーナーと、はるかに大きな施設の新しい「雇われ」COOを比較できるだろうか?まだ開業前の大規模施設と、何年も営業を続けている小規模施設の比較はどうか?マカオのジャンケット事業者対香港ジョッキークラブのCEOでは?または間もなく上場するこじんまりとしたカジノ企業のトップと、国民のゲーミングが許可されていない韓国のカジノチェーンの社長では?これらは、アジアンゲーミングパワー50の選定委員会が格闘する難しい問題だ。
このような類のランキングには常に批判や反対意見が付きまとうもので、よくあるのは軽視されたと感じる人々からの批判だ。よくランキングなんて見ていない、または気にしていないという声を耳にするが、直接、または代理人を通じて、評価が低いことに対する苦情をよく受け取ったり、または翌年へのロビー活動のための連絡を受けたりする。不思議なことに、これまで順位が高すぎると言 って苦情の連絡をしてきた人は誰もいない!
決定
今年アジアンゲーミングパワー50の選定委員会に9名の尊敬すべきメンバーを再度迎え入れることができたことを大変うれしく思 っており、リストの最終仕上げでの長いプロセスを通じて貴重な意見やインサイトを共有していただけたことに感謝を伝えたい。9名全ての審査員は後の頁で紹介する。
過去10年間で、アジアンゲーミングパワー50は業界で最も重要な人物の決定版リストとなり、そうして我々は業界で重要な役割を担い、ただただ正しく行うという責任を負っている。ランキングの熱心なフォロワーの皆さまは、2016年に我々がパワー50ランキングの方法論を徹底的に見直し、ランキングにおいてより科学的かつ客観的になる努力をする中で、リスト上の各人物を数字で表す「パワースコア」を導入したことはご存じだろう。これが好評であったために、2017年もこの方法を継続した。
パワースコアポイントは様々な要素から生じ、その中にはその人物の組織のGGR(または必要であれば代わりの比較測定)、その組織の重要方針に影響力を持つトップ上級幹部の間でそれらポイントを加重「分割」したもの、 その人物が雇用されているのかまたは大きな株式割合を保有しているのかによる調整、在職期間、過去12カ月間事業取り組みの中でどれくらい積極的に動いていたか、その人物の長年のゲーミング業界での経歴、その人物がどの法域で事業を運営しているのか、その他様々な要素が含まれる。一部の要素は必然的に主観的になるが、常に客観的であろうと努力する中でその要素にポイントバリューを割り当ててきた。我々はこれを誰がどこにランクインすべきか、またはすべきでないかというあらかじめ決まった考えを持つことなく行ってきた。

結局のところ、この業界では「パワー」というコンセプトは一般的にお金の直接的または間接的な支配に落ち着く。支配するゲーミング粗収益(GGR)が大きければ、パワーも大きくなる。しかし、具体的に「支配」とは何なのか?それは影響力だ。誰が最終的なデシジョンメーカーなのか、そして時にそれは単純にその部屋にいる全員が答えを待って見つめる人物は誰なのかということを意味する。他の国がそれは国だというから、それは国であるというのと同じように、単に他人が彼らは力を持っているというからその人たちは力を持っているということだ。
選定プロセス中に生じた他の質問は以下の通り。
「アジアとしてカウントされる国はどこか?」
西はインドから、南はニュージーランド、東はサイパンから北はモンゴルまで。
「業界に強い影響力を持つ非事業者、例えば規制機関、メディアコメンテーター、アナリスト、学識者、サプライヤー、コンサルタント、ゲーミング専門の法律家などはどうか?」
そのような人たちが持つパワーを考察してきたが、慎重に検討した結果、規制当局を含めることは不可能であるという結論に達し(PAGCORのアンドレア・ドミンゴ氏は規制機関としてではなく純粋に事業者としてランクインしている)、そしてその他全てのカテゴリーに分類される人たちのパワーを検討した結果、トップ50に入ることができたのは直接的な事業者だけだった。
「会社のオーナー/CEOと、COOの間でどのように選ぶのか?」
多くのゲーミング企業にはカリスマ的で起業家精神にあふれたオーナー/CEOがいる。そしておそらくより経験豊富かつ冷静なゲ ーミングの専門家が社長そして/またはCOOを務めている。前提条件としてオーナーであることは必然的により多くのパワースコアが与えられる。結局のところ、オーナーは常に任命されたCOOをその役職から強制的に追い出すことができる。しかし、オーナーが意思決定の責任の非常に大きな部分を委任している時、雇われCOOは彼らの「ボス」よりも一層強い力を持つことができるケースもある。答えはケース・バイ・ケース。
「スタンレー・ホー博士はなぜもうランキングに入っていないのか?」
ホー博士はSJMの日々の運営から実質的に身を引いた後の2011年にリストから引退された。ある経験豊富な業界のベテランが言うように、「彼を普通の人々と一緒にすることはできない」 その考えに賛同する。
最後に、この機会を使って、ランキングの作成に根気強く取り組み、素晴らしい考えを共有してくれた仲間である選定委員会のメンバーに御礼を申し上げます。それではこれ以上はとやかく言わずに、12度目となるアジアンゲーミングパワー50を発表いたします。お楽しみください!