Inside Asian Gaming
2021 年 4月 IAG JAPAN 9 www.asgam.jp サンズの未来 ベン・ブラシュク 編集長 あなたのフィードバックが必要です。 コメントは bb@asgam.comへ 送ってください。 社説 2 021年3月3日、ラスベガス・サンズ(LVS)は、ラスベガスにある 全ての不動産ポートフォリオを売却するための合意に達した と発表した。そして同社はその見返りとして、62億5,000万米 ドル(6,850億円)という強力な軍資金を手に入れた。 昨年の決算発表でも示唆されてはいたものの、創業者のシェルドン・ アデルソン氏が亡くなってから2カ月足らずで下された売却という今回 の決定は、世界で最も大きな成功を収めるカジノ会社が、別の成長の 機会にその意識の向く先を変え、刺激的な新時代に入ったことを示し ている。 特にLVSは、最も収益性の高い資産があるマカオやシンガポールの ホームであるアジアへの集中度が増しているという合図を出してきた。 しかし、その7,000億円近い資金は実際どこに行き着くのだろうか。古 典的な言い方をすると、可能性は無限大だ。 間違いないことの一つが、マカオとシンガポールへのさらなる投資 だ。サンズコタイセントラルをザ・ロンドナー・マカオへとアップグレー ドするための20億米ドル(2,200億円)をかけた直近の投資がすでに完 成間近となる中、同社の会長兼CEOを務めるロブ・ゴールドスタイン氏 は、1月の第4四半期決算発表の中で、マカオの再入札手続きの一部を 形成するさらなる投資を約束する予定で、追加で50億から100億米ド ルという額の投資を喜んで受け入れると述べた。 ゴールドスタイン氏は当時、アナリストたちに対して「他にマカオの ような場所はなく、(そして)マカオでは我々はまだ道半ばだ。これから 何年もの間そこにいるつもりだ」と語った。 同様に、LVSはすでに4つ目となるホテルタワーの追加など、シンガ ポールで現在進行中の33億米ドル(3,600億円)をかけたマリーナベイ・ サンズの拡張資金を出しているが、既存タワーをそれに合わせてアッ プグレードするために、さらなる資金を投入することも約束している。 日本は依然として非常に中ぶらりんなままで、LVSはコストの高騰 によって横浜での入札から撤退し、アデルソン氏はその理由を「IR開 発に関する枠組みによって目標が達成不可能になったため」と説明し た。主要都市に作られる日本版IRは、少なくとも800億米ドル、おそらく 1,000億米ドルを超える規模になると予想されており、その機会は説得 力があるものでなければならないだろう。しかし、一部の人が信じるよ うに、人口の多いを抱える東京が今年後半にレースに参加するとなれ ば、LVSが戻ってくる可能性は充分にある。 LVSは既存事業を手に入れられるか?ここでの明らかな選択肢がオ ーストラリアのクラウン・リゾーツだ。現在、ビクトリア州と西オーストラ リア州でのカジノライセンス保持適格性に関して一連の調査の渦中に あるクラウンは(すでにニューサウスウェールズ州はNOという結論)、収 穫適期をむかえているようだ。 確実にブラックストーン・グループはそのように考えており、すでに 80億豪ドル(6,700億円)で全ての発行済株式を取得するための提案を 行っている。しかし、カジノビジネスでの強固な経験とネバダ州で規制 機関から承認を受けてきた実績を持つ企業として、LVSはブラックスト ーンのような投資グループよりもはるかに有益なものをもたらすと言 えるだろう。 LVSにとってのもう1つの現実的な選択肢がタイだ。タイがカジノゲ ーミングを合法化する前には幾つもの問題をクリアする必要があるも のの、タイ首相が1月にこのアイデアに対してオープンだと発言したこ とで、少なくともうわさの種にはなった。 LVSは過去にバンコクでのI R開発に関心があると述べてお り、7,000万人の人口を抱えるタイは、アジアの「次なる目玉」になる大 きな可能性を秘めている。サンズの未来は時の経過とともに明らかに なるだろう。
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