長年、日本はアジアゲーミング業界の次の金のなる木だと考えられてきたが、芽を出しかけている日本の統合型リゾート業界の輝きが失われ始めている可能性はあるのか?
現時点ではIR誘致を断念するという北海道の決定や、日本政府がカジノ所得に課税する方針で検討に入ったことが明らかになるなど、日本でIRライセンスを狙う事業者たちの出鼻をくじく最近の後ろ向きな報道を受けて、Inside Asian Gamingには、日本が取っている方針に本気でイライラを募らせる投資グループや他の業界関係者の多くから相談が寄せられている。
投資家たちからのメッセージははっきりしている。非常に重要な投資対投資利益率の方程式が維持できなくなる前に日本が課すことのできる規制の数は限られている。
IAGの取材から分かったのは、IR実施法が可決されてから18カ月間、IR規制をめぐる全ての議論が最終的に事業者の気持ちを遠のかせているという共通の傾向が見られているということだ。
IR施設内のカジノの占有面積への3%という上限を設けることや住民から6千円の入場料を徴収するといった一部の規制は、大方予想されていた。
ホテルの総客室床面積を10万㎡以上とすることや、30%の税率などその他のルールは世界基準では高い方になる。
日本の3つのIR全てにおいてMICE施設は、国際会議用の会議室や展示会スペースを組み込んだその面積を12万㎡から20万㎡の間の広さにしなければならず、これは現時点で国内最大のMICE施設である東京ビッグサイトの10万3千㎡を大幅に上回っている。都市圏にとってはかなり大きく、全ての地方の候補地にとっては実に異常な大きさだ。
しかしながら、投資家を最も不安にさせているのはさらに最近になって定められたルールだ。5月に東京で行われたジャパン・ゲーミング・コングレスで、複数の事業者が日本政府が提案するカジノライセンス期間が5年間と短いことを問題として取り上げ、融資を確保するにあたってこれが足かせになると訴えた。
日本MGMリゾーツのエド・バウアーCEOはその際、「銀行が挙げている一つの問題が、借り入れ用途の5年間というこの期限の部分であり、5年という期限があるものを完全に収益化するのにどれだけのキャッシュフローがあるのかという点だ。明らかに、それをどのようにして実現するかを真剣に考えなければならない。増資の必要があるのか、それとも投資を縮小するのか、そしてこのライセンスを獲得するための入札いう観点から見てそれが何を意味するのか?この問題が資金調達の柔軟性を大幅に失わせている」と述べていた。
これはここ数カ月間でさらに一層差し迫った問題になってきており、ラスベガス・サンズとメルコリゾーツは、日本での都市型IRの開発には、優に100億米ドルを超える費用がかかると予想していることを示唆している。これは、日本がその規制上の枠組みの大部分において基礎としている法域、シンガポールに建てられたマリーナベイ・サンズ(MBS)の開発コストの倍の額となる。
MBSの事業者であるラスベガス・サンズが19年第3四半期決算報告の中で、同社は今その数字を用心深く見ており、日本でIRライセンス獲得を目指すことはもはや動かぬ事実ではないと初めて示唆したことは注目に値する。
大阪では危険な兆候さえ見られている。大阪の最初のRFIプロセスには、世界の大手IR事業者たちがこぞって群がったにもかかわらず、RFPに残ったのはたった3社の事業者だけだった。
そして今、北海道が見たところIRレースから撤退し、政府が国内のカジノを訪問する外国人のカジノ所得に追加の課税を検討する中、多くの人が知りたいのは、IR開発に手を挙げている事業者たちはいつになったら政府に譲歩してもらえるのか?ということだ。
もしこのパターンが続くなら、日本は本当に金のなる木を枯らしてしまう危機に瀕している。